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6話《隠された血筋》
『デリマラ様。お迎えに上がりました。』
透き通るような緑色をした竜に乗り、ひとりの青年が地面に降り立つ。水色のズボンは裾の部分が締まっていて、膝まである上着は前で重ねるようにして脇で止められ、白に金色の布で縁取りがしてある。
腰には1本の剣が下げられている青年は、銀の髪に金の瞳をしていた。
『すまないな。もう、動けそうにない。』
そう言ったデリマラは全身が血で染められ、怪我を治せるほどの魔力は残されていない。
洞穴は竜の巨体がぶつかり合ったせいで、星空が見えるほどに頭上は吹き飛ばされていた。
『デリマラ。ごめん。俺たちのせいで。』
『俺らがもっと早く正気に戻っていれば。』
『すまない、怒りで我を忘れていなかったらこんなことには。』
『ごめんなさい。ごめんなさい・・・。』
4体の竜に囲まれたデリマラは、動けはしないが声はしっかりと聞こえているようだ。
『・・・悔いて、いる、のなら、・・・ヴィシルを、助けて、・・・やって、くれ。・・・俺と、同じ、ように、・・・ギュシラン、から、来たんだ。・・・ヴィシル、・・・此方へ。』
『・・・はい。』
ヴィシルはひとり、竜に囲まれたデリマラの元へと向かった。
後ろから友人たちの声が聞こえるが、今はデリマラと話す方が重要なのだ。
デリマラは魔力が尽きかけている。一度眠りについてしまえば、次に目覚めるのはどのくらい先になるかわからない。デリマラの回復力にかけるしかないのだ。
『・・・ヴィシルは、俺の、・・・兄の、孫だ。・・・名前、くらいは、聞いたことが、・・・ある、んじゃ、・・・ないか?』
『あ、そういえば。うん。』
デリマラがヴィシルを自分の兄の孫だと紹介すると、4体の竜は名前に聞き覚えがあったようで、ヴィシルを見たことはなくても、その名前を知っていると頷く。
ラシュアル家に捕らえられる前の話だろう。ヴィシルは自分の年齢以上に閉じ込められていなかったことに安堵した。
『・・・それ、ならば、大丈夫、だな。・・・ヴィシル、こいつら、も、・・・頼める、か?・・・頼み、事、ばか、りで、・・・悪、いな。・・・兄に、巻き、込ん、・・・だと、怒、ら、・・・れて、し、まうか・・・。』
『いえ、大丈夫でしょう。』
おそらくヴィシルの祖父は、ヴィシルのしたいようにすれば良いと言ってくれるだろう。
ウェドリシアの学園に入るように決めたのは父であるが、今回の竜たちにしたウェドリシアの行動を、父は許さないはずだ。
だからこそ、ウェドリシアから竜は姿を消したのだが、真実を知らないウェドリシアの国民には、竜がこの国に怒り、嫌いになったからいなくなったとしか解釈できない。その原因はラシュアル家だと言うだろう。
確かにラシュアル家が竜を捕らえて閉じ込めていたことや、デリマラを捕らえて拷問したことは、この国から竜たちが姿を消す原因ではある。
ラシュアル家のような人間をどれだけなくせるかが、これからのウェドリシアの課題なのかもしれない。
『彼の、ラルドの血縁者を───。』
デリマラは言い終える前に、その目を閉じたまま意識を手放した。
4体の竜たちは動かなくなったデリマラを悔やむように、悲しき咆哮が夜のウェドリシアに響き渡る。
『では、ギュシランへと帰還します。ヴィシル様、ご武運を。』
ヴィシルへと一礼をした青年は、連れて来た竜たちに指示をだすと、竜たちが動き出す。
大きな布で包まれたデリマラは、ギュシランから迎えに来た竜たちによって空へと上がっていく。
ヴィシルはデリマラから託された願いを思い浮かべ、自分がやるべき事を改めて噛み締めた。
「どうしようか。このままここにいるわけにいかないし。」
「え、あ、うん。・・・どう、しよう、ね。」
ヴィシルが意見を求めようとセザリシオに視線を向けて問いかけると、セザリシオは上の空でヴィシルの話を聞いているとは思えない。
(セズはだめか。かといってミュアドは土地勘があってもお祖父さんのことで衝撃を受けてるだろうし。ミュアドの家族も同じか。こいつらがいるから早くこの場を去らなきゃならない。仕方ないか。)
「はぁ・・・。ここにいたらラシュアルの家のやつらが戻ってくる。フィス、マーグ、ユデラ、キピニア。適当にみんなを連れていってくれないかな?行き先はみんなが隠れられそうな場所だね。」
『ヴィシルは俺と一緒でいいか?』
『うん、お願いするよ。』
『フィス、ずるい!ヴィシルは俺が連れて行こうと思ったのに。』
『早い者勝ちだ、ユデラ、諦めろ。ほら、俺たちはあいつらを連れていくぞ。早くしないとやつらが戻ってきちまうぞ。』
どうやらこの4体の竜のリーダー格はキピニアのようだ。普段から落ち着いた性格で、複数体を上手くまとめて来たのだろう。
放心状態のシュギ、セザリシオ、ミュアド、そしてミュアドの家族をマーグ、ユデラ、キピニアが前足に乗せ、洞穴のあった場所を飛び立つ。
今、竜を連れて学園のみんながいる場所には戻れない。竜騎士ですら竜がいなくなったままの状況では、騒ぎになることは目に見えてわかる。
だからこそ、ヴィシルは隠れられる場所ということだけを4体の竜に提示したのだ。
「夢じゃない、んだよな。あぁ、でも、ミュアドを思えば、感動してる場合じゃないし。あれ?そうなると、ミュアドは100%じゃなくても銀聖竜の血縁者で・・・。す、凄い。こんな近くにいたんだ。ミュアドも竜の姿になれるのかな。あっ、俺、またこんなにテンションが・・・。」
避難場所として移動した先の洞窟の中で、中がいくつかの分かれ道があり、それぞれが行き止まりであったため、2つに分かれて留まることにした。
ミュアドの家族は話し合った方が良いだろうと、家族4人にマーグとキピニアが付き添っている。
そしてヴィシルとシュギ、そしてセザリシオの3人にフィスとユデラが付き添うことになったのだが、セザリシオはやっと銀聖竜を見ることが出来たと浮かれているのだ。
ミュアドの祖父は銀聖竜であり、ミュアドの父親もまた銀聖竜の血を引いている。
おそらくミュアドの父親は人と竜のハーフであり、ミュアドはクウォーターだろう。
ヴィシルとデリマラの会話を聞けていないセザリシオは、ヴィシルも銀聖竜の血筋であり、ミュアドと再従兄弟であることを知らない。
セザリシオの中で身近な銀聖竜の血筋はミュアドという認識のため、意識はミュアドに向いているが、ヴィシルは歴とした純粋な銀聖竜である。
ヴィシルがデリマラと親密にしていたことに触れてこないのだから、何も言う必要はないとヴィシルは感じていた。
それに、この状態では余計に悪化させてしまいそうだ。
『おいおい、こいつら大丈夫か?』
『平常に戻るまではここにいた方がよさそうだね。』
『しばらくは俺が食料調達に行くことになりそうだ。仕方がないんだよ。セザリシオは銀聖竜に強い憧れを持ってるみたいだし、シュギの方もセザリシオから聞いた話を妄想みたいに捉えてた部分があったからな。フィスもユデラも落ち着くまで我慢してやって。』
ヴィシルは初対面の竜たちと打ち解けてきていた。会話が出来るからということもあるだろうが、同族であることも大きい。
「なぁ、ヴィシル。俺、思ったんだけど、ミュアドのお祖父さんて人の姿でいたよな?銀聖竜が人の姿になれるっていうなら、俺たちが知らないだけで他にも銀聖竜がどこかにいるんじゃないか?」
地面に伏せているフィスに、寄りかかるようにしてすわっているヴィシルは、声を掛けられ視線を上げると、シュギが気付いたらしく疑問を投げ掛けてくる。
ユデラも伏せている状態ではあるが、セザリシオもシュギも竜とフレンドリーとはいかないらしい。
良いところに気付いたな、とも言えずに今は話を聞いて上手く流しておこうと、ヴィシルは知らない振りをすることに決めた。
いつかは自分のことを話してもいいとは思うが、デリマラに託されたからには、本当にセザリシオをパートナーに選んでいいのか考えなくてはならない。
ウェドリシアの現状を変えることが出来るのは王族であり、身近にいるのはセザリシオだけだ。
今までの時間の中で、セザリシオが自分を偽ることをしない、優しい人柄であることはわかっている。
「いたらシュギはどうするの?」
ヴィシルは敢えて聞き返した。自分の口から銀聖竜がこの地にいるとは言えないし、自分の正体を明かす気はない。
「どうするかって言われても、わかんねぇ。でも、人の姿になれる竜ならこうやって話が出来るだろ?話してみたいって思いはある。」
シュギは嘘を言ってはいないだろう。何を話したいのかはわからないが、既に会話ならしているとも言えない。
「そう・・・。」
「ヴィシルは普通だな。俺はセズが言っていた銀聖竜をこの目で見たことが、まだ信じられないんだ。俺よりもセズの方は当分元に戻りそうにないけど、な。」
そう言うシュギは本人が言うほどには、驚いているようにも、セズのように浮わついてもいないように見える。
ヴィシルが普通なのは当たり前だが、学園に戻る日までにセズがいつもの状態に戻るかがヴィシルの不安になった。
『そんなに銀聖竜に会いたいものなのか?』
『俺たちは接点があったけど、竜族にも憧れの存在なんだよ。竜族は銀聖竜が人型をとれることも、王族で城にいることも知ってるし、会おうと思えば会えるから人間ほどじゃないと思うけどね。』
『一度その姿を見たら忘れられないんだ。ヴィシルは自分でわからないかもしれないけど、凄い綺麗なんだよ。滅多に人型から戻らないから機会は少ないけどな。』
そういうものなのか、とヴィシルは気持ちはわからないままに納得する。
確かに移動する際には乗せてくれる竜が多いため、自らが飛んで行くことは殆どない。
ギュシランでは気配や魔力はそのままであるからか、人型であっても行き先では誰もが銀聖竜とわかるのだ。
「ごめん、いろいろ迷惑かけたよね。」
「もう大丈夫なの?」
既に学園の集合日時は過ぎていて、学園ではもういつもの日常が戻っている。
隠れられる場所まで移動してから2週間ほど経ってしまったが、緊急時のためにセザリシオが持ち歩いている転送魔法具によって、集合日の朝に手紙を王宮に飛ばし、暫く戻れない事情を伝えた。
その時もセザリシオは浮かれた状態ではあったけれど、どうにか手紙を書かせて転送させたのだ。
学園を無断欠席とならずに済んでよかったと、セザリシオに感謝した。もちろん、言っても声は届かないため、心の中でではあるが。
「もう大丈夫だよ。本当に、ごめんね。」
「それはいいんだけど、これからどうするんだ?手紙には竜といることは書いてないだろ?」
「うん。書いたら王宮から何人も来て隠れる所じゃなくなるよ。それに竜がいた生活に慣れていたせいか、突然いなくなったから色々と大変になっているらしくてね。争いも所々で起きてるみたいだし。」
昨夜、王宮から届けられた手紙に近況が書かれていたらしく、その内容を読んだセザリシオは漸くいつもの状態に戻ってくれた。
竜はどの生き物よりも移動速度が早く、荷物を運ぶにも人を運ぶにも、力もあるからか相当な重さに耐えられるため、人々にとっては助かっていたのだ。
その竜がいなくなった今、ウェドリシアでは移動は馬に頼りきりで、荷物を運ぶのは馬車である。
転送魔法具もあるが、人や大きな物、大量荷物となると、今の技術では到底無理だ。
開発途中である魔法具の改良は、竜がいたからか手紙が届けば他はそれほど、不自由していなかったため、手付かずの状態になっていた。
「父がギュシランには竜がいるから、力を貸してほしいと頼んだらしけど、良い返事はもらえなかったみたいなんだ。」
「竜にも意思はあるからね。聞いてると竜が奴隷みたいな扱いに聞こえる。助けを頼むならウェドリシアの人をもう一度信じてもらえる機会を作ってほしいっていう方がいいと思うよ。あとは誠意次第じゃないかな?」
「そんなつもりじゃないんだけど。」
「でも、今まで頼りきっていた感覚が、竜ならと何でも頼んで、やってもらうのが当たり前の状態になっていたら、奴隷と同じ感覚を無自覚に竜に持っていてもおかしくないと思うよ。たぶんそういうものが知らず知らずに出ていて、ギュシランの王はそれを感じ取っているのかもしれないね。」
感謝というものは、当たり前の状況に慣れてしまうと、次第に忘れていってしまうのだろう。
助けている状態でお礼の気持ちが汲み取れなければ、不満が募っていくのは人だけではない。人の言葉を理解する竜にも、しっかりと意思はあるのだ。
「そう、なのかもしれない。俺たちは知らず知らずに竜を奴隷みたいに思っていたのかな。会話が出来ていたら違っていた?竜と話してみたい。いつか話せる日がくるかな・・・。」
「やっぱりセズもそう思うか。ミュアドのお祖父さん見たら人と変わらなかったしな。話してみたら色々と変わる気もするんだよ。」
ヴィシルは黙って2人の話を聞いた。2体の竜は目を閉じたまま、何も言わず話を聞いているようだ。
「この後どうするの?」
頷きながら話を盛り上げる2人の会話を遮るようにして、ヴィシルは問いかける。
問題は一緒にいる4体の竜であるが、ミュアドの方もゆっくり話し合いが出来ていればいいと思う。
今まで人間であることを当たり前のように思っていた所に、今回のミュアドの祖父が竜であるという事実は、ミュアドたち家族に大きな衝撃を与えた。
デリマラが竜の姿になってから、ミュアドの両親は口を閉ざし暗い表情になり、この場所に来てからも今まで会話らしいことは出来ていない。
ミュアドも両親と同じようではあったけれど、両親とはまた別の感情もあるように思えた。
ミュアドの妹であるマリナだけは、驚きはしたものの両親ほど思い詰めてはいないらしい。
そのため、話し合いが終わったら声を描けて、と唯一平常を保っているように感じたマリナに伝えた。
「どうするのが一番かな。彼らを連れて移動は出来ないし。せめて彼らがどうしたいのかわかるといいんだけどね。」
ヴィシルの父からは何の連絡もない。ウェドリシアの竜騎士学園に入ることは、友好関係が築かれた時から決まっていたことで、既に入学もしている。
ヴィシルは父親からの連絡がないということは、この先のことは自分の判断で動けということだと解釈していた。
友人として付き合ってきた彼らは嫌いではない。けれど、まだ自分の正体を明かそうとは思えないのだ。
いつかはと思ってはいるが、今はまだ早いと感じていた。ベイドナが竜の言葉を聞き取れていることには気づいていたが、家族には話したとしてもセザリシオとシュギには話さないかもしれない。
竜の言葉を聞き取れることを隠す必要がないとベイドナが判断した時、ヴィシルが竜と会話が出来ることまで話されてしまう可能性はある。
あの場でヴィシルが会話をしていたとわかればの話だが。
「ミュアドやミュアドのお父さんが話せるなんてことないのか?だって、竜の血を引いてるなら可能性はあるだろ?」
「そうか。家族の話し合いが終わったら聞いてみよう。でも、ミュアドのお祖父さんとお父さんに血縁関係がなかったら?」
「それはなさそうだけどな。わかんねぇけど。」
翌日になり、ミュアドは家族と共に、ヴィシルたちのいる方へと来た。
「待たせてしまってごめんね。」
そう言って申し訳なさそうに頭を下げてきたのはミュアドの両親だ。見た限りでは家族がバラバラになることはないように思う。
ミュアドの様子に変化らしいものは見られないが、まだ何か不安に思うことがあるのか浮かない表情である。
「ミュアドはこのまま学園に通うことに決めたよ。ただ、俺は何も変化はないけれど、ミュアドやマリナはわからない。父の血がどう影響するのか、人の姿になれる竜と人との違いがあるのかも、俺にはよくわからないんだ。わかっていることは、俺には竜の声が聞こえる時があることと、俺の寿命が人とは違うこと。俺は今130歳で、竜の声が聞こえる条件とかはわからない。」
「見えねぇ。どう見ても40歳くらいだ。それに、竜の声が聞こえてるって・・・。」
ベイドナがミュアドのこと、ハーフである自分についてわかっていることを言うと、それを聞いたシュギが驚きの表情で呟く。
ベイドナの年齢については、セザリシオも驚いていたが、当然の如くヴィシルが驚くことはなかった。
竜種によって寿命は多少異なるが、竜は2千年から3千年生きる。魔力や体のつくりなどから銀聖竜が一番長く生きるようだ。
それを知っているのは竜族しかいないが、ハーフが同じ長さの寿命とは限らない。
クォーターに関してはもっとわからないことが多いため、ミュアドの寿命の予測は出来ないだろう。
デリマラにヴィシルの指示に従えと言われたベイドナだが、ヴィシルにこの場で指示を仰がなかったのは、ヴィシルが竜に関して声に出して話していないことを察してのことかもしれない。
『ベイドナさん。俺はハーフやクオーターに関しては何もわかりません。ですが、人型をとる竜は人の姿で30歳あたりまでは人間と同じ速度で成長していきます。その後はわからないほど成長は遅いですね。それと竜の寿命は平均して2千年から3千年ですよ。混血となる貴方やミュアドはわかりませんが。』
ヴィシルの声が届いたのかベイドナは安心したようで、表情が穏やかになる。ヴィシルに話しかけてこないことから、ベイドナは竜の声を聞き取れるだけで会話は出来ないらしい。
「ミュアド?何か不安でもある?」
ミュアドの浮かない表情に気づいたのか、セザリシオが優しい声色で問いかけた。不安な思いを隠していたのか、気づかれないと思っていたらしいミュアドは、セザリシオの問いかけに目を見開く。しばらくセザリシオを見ていたが、視線を地面へと落とした。
「話せるなら話してほしいんだ。俺たちには竜の血は流れてないから、ミュアドの悩みを全部わかってあげられないとは思う。でも、ミュアドは大切な友達だから、力になれることなら何だってする。」
「うん、ありがとう。」
ミュアドは俯いたまま、セザリシオにお礼を言った。紛れもないセザリシオの本心からの言葉に含まれた、優しさが嬉しかったのだろう。ミュアドの目からは涙が溢れ落ちていく。
あれ程銀聖竜がと言っていたにも関わらず、その血を4分の1引いているミュアドに、浮かれた様子は今のセザリシオには感じない。落ち着いた様子でミュアドに接するセザリシオは、前日までが嘘のようである。
俯いて涙を流すミュアドを、セザリシオはそっと抱き寄せて落ち着くのを待った。
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