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二人並んでゆっくりと谷を下りていると、目の前にいつかの白狸が現れた。 「ああ、お前タヌキ。悪かったな。(わり)ぃ事をした。すまんかった。痛くないか?」 「キュウン」 ひと鳴きしたそれはまるで『大丈夫』だと言っているように感じる。 おじいちゃんは白狸にゆっくり近寄るが逃げずに白狸は待っていた。怖怖とおじいちゃんは背を撫で、ごめんな、と言っている。 「おじいさんは終活していたのかもしれない。その中で亡き妻を思い出し、仕舞い込まれたままの着物に悪い方へ引っ張られてしまった。だけど今はとてもスッキリした顔をしている」 「華也乎さん、ありがとうございます」 「きっと果穂がこの島に来たのは自分の為だけではない。多江に呼ばれたのかもな」 そうかもしれない、と思った。 全財産を握り締めた時は父方のおばあちゃん家に行くつもりだったのに、家を飛び出した瞬間、考えが変わっていた。 「きっと果穂の悩みも多江にはお見通しなんだろう。果穂の悩みは何だ?」 「アイオライトを飾っておいて今更そんな事を聞くんですか? 華也乎さん、本当は私の悩み分かってるんですよね?」 「私はただの人間。ぴったりの石を選んだのはあの子だよ」 そう言って華也乎さんは人差し指を真っ直ぐ前に突き出す。 それは白狸を示していた。
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