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「おじいちゃん! 止めてっ!」 老人は紛れもなく私のおじいちゃんだ。 棒を持つ手を慌てて抑えるが老人と侮るなかれ、老人と言えども男の腕力に負けた私はいとも簡単に振払われ敢え無く尻餅を付く。 「痛っ!」 「あ? なんじゃあお前?」 「おじいちゃん、果穂だよー、痛〜い〜」 「カホ? 果穂ちゃんか?」 睨み付けていた目が柔和に変わると、私はほっと胸を撫でおろす。 「って言うかどうしてイジメてたの?」 「多江が……」 それはおばあちゃんの名前。ぼそりと呟いてそれきりおじいちゃんは黙って背を向けた。ぶら下がる皺くちゃの手は小刻みに震えている。 「おじいちゃん?」 とぼとぼと玄関に向かう背中と横で倒れている犬を交互に見て、その犬の足に怪我があるのを見つけ、はっとした私は急いで駆け寄る。 「痛かったよね、ごめんね」 水色の花柄のハンカチを出して後ろ足を縛ってやると首輪をしていない白い犬は逃げるようにひょこひょこと山の方へ向かって行った。 ごめんね、とその背を見送りながら呟くと私は家の中へ入りおじいちゃんを探した。
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