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昔馴染みの小さな店先で丸椅子に腰掛けバニラアイスを食べていると、おじいちゃんは知人に話し掛けられていた。 おじいちゃんは島の人から『佐々木のじいさん』と呼ばれているらしい。それくらいしか分からない。話しの内容は町内会がどうだとか、あっちのじいさんが、こっちのばあさんがと世間話に盛り上がっている。 「おじいちゃん、私少しぶらぶらしてくるね」 「気ぃ付けてな」 アイスを食べ終えた私はおじいちゃんたちに手を振ってその場から離れる。 ふう、と一息吐き天を見上げると明るかった空は薄紫に変わりつつあり、町家通りに長い影が伸びている。 各家の玄関先には角張った行灯が飾られ、点々と灯り始めていた。その中で私は妙に惹かれる灯りにすうと吸い寄せられてしまう。 目の前の灯りには筆書きで【繍華堂】とあった。
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