羽化

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羽化

 鼻歌交じりに浴室を出ると薄暗くなりはじめた部屋の電気をつけ、クローゼットの奥に押し込んである一昨日買ったワンピースに袖を通した。  いつもどおりに肌を整え、まつ毛を綺麗にカールさせ、頬は淡いピンクに。新しいグロスは甘い香りが好きになれそうにもない。  蝶が固い蛹を破り、少しずつ翅を広げていくように昼の俺は消え、夜の私になる。
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