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ゆっくりとロリポップキャンディを食べて、名残惜しく感じつつ下界を後にした
私と神が天界へ帰ると、あれほど神の不在に慌てふためいていた神官たちも、
泣いていた天使たちも、笑顔で私たちを迎えました。
彼らの様子の違いに戸惑いつつ、神がしばらく留守にすることを知っていたのかと聞くと、彼らは笑って言いました。
「あなたは最近、一人でばかりいたから」
話を聞いてみると、私が神によって広まった下界贔屓について面白く思っておらず、周りと距離を置くようになったことを、みんな気にしていたそうなのです。
頑なに下界を邪険にする私がこれ以上、一人にならないように……。
私が下界を好きになるきっかけを作ろうと考えた神官と天使たちは、わざとあの
ような言動をとり、私を下界へ行かせたらしいのです。
下界へ行けば、私もそのよさに気がついてくれるだろう、そうすれば、気まずくなってしまった私との距離を、戻せるのではないかと考えたらしいのです。
慌てふためいていたのも、泣いていたのも、すべては演技でした。
私は彼らの思惑など知らぬまま、まんまと騙されました。
しかしそのおかげで、私は素晴らしい光景を見ることができたのですから、たまには素直に、彼らと笑顔を並べましょう。
そうすると、また、不思議なことに気がつきました。
見慣れた天界の景色が、きらきらと色づき始めたのです。
それはまるで、あの少女にもらった、ロリポップキャンディのように綺麗でした。
今度は、ここにいるみんなで、食べましょう。
そうしたら、いったいどれほどおいしくなるのでしょうか。
次に下界に降りたときの楽しみを思い描いて、私は手招きする皆の輪の中へ、
入っていきました。
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