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二人で並んで歩き出す。大滝さんは私の耳元に顔を寄せて「どう?」と訊いてきた。
「どうって?」
「百瀬くんとよ。上手くいってる?」
大滝さんはニイと弓なりの眼になった。
――うぎょわっ!!
つい先ほどの奇声を思い出し、くすりと笑う。普段冷静な人なだけに、あの出来事は面白かった。
「何? にやけちゃって。楽しいことでもあったの?」
「まあ」
(楽しいっていうか)
「あら、何よ。ちょっと給湯室寄って行きなさいよ。私これ洗うから。ね、話聞かせて。ね、ね」
そう言うなり私の腕に自分の腕を絡み合わせ、強引に引っ張った。半袖から出ている私の腕に彼女のカーディガンの腕が当たりチクチクする。
(どうせ今断っても、また訊かれそうだし)
私は「分かりました」と素直について行くことにした。
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