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「六、七月は一課がカタログ当番だからね。よろしく頼むよ」
総務課の遠藤さんがやって来て、私の机の横に台車を置いていった。その上にはカタログ名の書かれた段ボールが四つ積み上がっている。私は隣に座る谷川さんに声を掛けた。
「谷川さん、これってどうしたら良いですか?」
「放っておいて良いよぉ。セールスがぁ仕舞ってくれるからぁ」
分かりました、と返事をする。放っておいて良いとはいえ机の高さより台車のハンドルの方が高いから、微妙に気になってしまう。
(今日は早い人でも戻りは十六時。それまで仕様が無いか)
半透明の間仕切りの先、太い柱に掛けられたホワイトボードに視線を送り、ふうと息を吐く。
これから産休に入るという谷川さんは、ギャルみたいな見た目通り、良くも悪くも若い今時の女子だった。お腹の大きい今だからなのか妊娠前からそうだったのかは分からないけれど、兎に角要領が良い。初日の課長に対する態度のように「私、今忙しいんでぇ、これお願いしまぁす」と周囲の人を上手に使う。とても忙しそうには見えないのに、だ。自分が上司だったら絶対キレてる。
(可愛いって得よね)
こんな態度でも丁寧に扱われているのは、妊婦だからじゃなく、若くて可愛いからに違いない。たとえ人妻だろうとこの条件は有効なのだ。男性に対して使われる『ただしイケメンに限る』と同じ。
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