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(ユウコって誰よ) 「アハハ。マジで?」  お尻のポケットから分厚い黒い財布がはみ出して、Tシャツの裾が変に捲れ上がっている。あのシャツを直すのはスマホの先の彼女(ユウコ)の役目になったんだろうか。 (狙ってるって、要は二股だったってことじゃない)  どこか楽しげな健の後ろ姿は、振り返ること無く店から出て行った。私は何も掴めなかった手をゆっくりと下ろす。 (健のくせにしっかりしてるじゃない)  脱力して落ちるように腰掛けると、板張りの床がギシリと軋んだ。隣の椅子に置いた鞄の底には、スカルのキーホルダーが付いた鍵が静かに眠っている。  はぁと重々しい息を吐いた。一人になって初めて耳に入ってきたのは、楽しげなJポップのインストゥルメンタル。 「もっと静かな曲にしてよ……」  独り言ちまぶたを伏せる。テーブルの上には空になった健のカップと、ぐちゃぐちゃな私のカップが残されていた。
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