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「原さんはさ、正直あの眼鏡どう思う?」 「ええと」 (どう思うって言われても)  大滝さんはようやく水を止め、ぐるりと顔をこちらに向けた。 「あの悪い目付きにつり目デザインでしょ。目付きの悪い人って優しげなフレームを選んで中和させることが多いじゃない。けれど百瀬くんのあれは目付きの悪さが強調されちゃって似合ってないというか似合いすぎてるというか。ほら、インテリヤクザじゃない」 (確かに……) 「まあ、眼鏡なんてさ、女の化粧と一緒で他人がどうこう言うもんじゃないけれど、何か思い入れがあるのかもね。例えば彼女に貰ったとか」 「眼鏡を、ですか?」 「一緒に買いに行ったとか。あとは褒められたって可能性もあるわね」  そうですね、と頷く。大滝さんは布巾でカップをぐるりと拭いて、食器棚に仕舞った。有名カフェチェーンのマークが大きく印刷されている白いカップだ。 「でも、あんな細かい人の彼女ってどんな人かしらね。百瀬くんに輪を掛けて細かかったりして。アハハハ。怖いわー」 「…………」  百瀬さんの彼女を想像する。三白眼な強面の隣に立つ美人の彼女。例えばサラサラな黒髪のモデルみたいな(ひと)。腕とか脚とかすごく細かったりして。だってあの眼鏡を付け続けさせるだけの力があるんだから。  ――その眼鏡似合ってるわ。百瀬さん。  頭の中の美人は優しい声を響かせる。それは百瀬さんの低い声と混じり合い心地良い音となる。 (って彼女が百瀬さんはおかしいわね。そういえば百瀬さんの下の名前……覚えてないや)
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