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「終わったわ。帰りましょ。また情報仕入れたら教えてね」
大滝さんはハンカチで手を拭きながら、私を押し出すようにして給湯室を後にした。
(彼女か……)
「はぁ……」
無意識にため息が零れた。ふわふわと浮かれていた気分が何故かもやもやと萎んでしまう。
(やっぱり疲れてるんだわ。今日はそのまま帰ろう)
「どうかした?」
私の心を読んだかのように、後ろの大滝さんが声を掛けてくる。
「何でもありません。今週も疲れたな、って」
くるりと振り向くと彼女は声を出して笑った。
「アハハ。何言ってんの。今週は三日しか無かったでしょ。元気出しなさい。若いんだから」
「そうですね」
「そうよ! 私なんて明日からずっと主人が居るかと思うと、それこそうんざりなんだから」
ばしばしと背中を叩かれる。今頃旦那さんは盛大なくしゃみをしているに違いない。
「さ、急がないと。ケンに叱られちゃうわ。お疲れ様ー」
「お疲れ様です」
大滝さんは私を追い越して小走りにロッカールームへ行ってしまった。私はゆっくりとその後ろ姿に付いていく。
(そうね。大滝さんの言う通りだわ。やっぱり買い物してから帰ろう。折角の連休だもんね)
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