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――鬼怖い人だから。
鬼怖い人なら嘘でもこんなことは言わないんじゃないだろうか。百瀬さんは私のことを短期派遣だからってぞんざいに扱ったりしていない。正面から向き合ってくれている。
(怖くなんてない)
フロントで分けられた黒髪の間に広がる広い額。吊り上がった眼鏡と三白眼。
その顔はいたずらっぽく片眉を吊り上げた。
「だから責任を持って、言いかけたことはちゃんと言え」
「え?」
百瀬さんは前髪を掻き上げる。きっと口角がニヤリと上がっているに違いない。
私はふうと息を吐いた。
「分かりました。良いですよ。言います。怒らないでくださいね」
「分かった」
怒らないとは言わない。
(これくらいじゃ波風は立たないから)
自分に言い聞かせるようにゆっくりと瞬きをしてから、三白眼を見上げた。
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