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「私が思うに百瀬さんはパワハラとか、セクハラとかそう言うことじゃないんだと思います」
「気ィ遣うなよ」
「ええ。ただ細か過ぎるのが原因かと」
「細か……ってそこか?」
そこですよ、と頷いた。
「百瀬さんは顔は怖いですけど、正直、中身は怖くはないですし。細かいなぁ、きっちりしてるなぁって。寧ろそれが怖いです。私なんて、いい加減だから」
てへへと笑うと、百瀬さんは額に手を当てて嘆息する。
「原…………お前、正直だな」
額に置かれた手が、そのまま前髪を掻き上げた。さらさらと落ちる黒髪は癖の無いストレート。私はにっこりと目を細める。
「言えって言ったのは百瀬さんじゃないですか」
百瀬さんはぷっと吹き出した。
「くくく。そうだな。原は間違ってねぇか」
細い瞳が三日月を描く。白いマスクがクツクツと揺れている。
「そうです」
私は頷いて、頬に落ちた髪を耳に掻き上げた。ずっと立ち話をしていた所為か頬が熱い。耳も赤くなっているかもしれない。
(なんだろう)
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