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百瀬さんの低い声は「けどな」と続ける。
「ちったぁオブラートに包めよ」
「え? それ、百瀬さんが言うんですか」
「ぷはっ。言うじゃねぇか」
私も笑って、エルダーの笑顔を見上げた。
――合う人なんていないでしょ。
インテリヤクザな私のエルダー。仕事はきっちり細かくて、自分にも他人にも厳しい人。
――あんな細かい人の彼女ってどんな人かしらね。
度が合ってないかもしれない、吊り上がったハーフリム。
(ザワザワする)
私は鞄を強く握り締めた。手のひらに爪が食い込むのに、力を緩めることができない。
「じゃあ、行くか」
百瀬さんが長身を翻して歩き出した。私は「はい」と返事をしてその背中を追う。
当たらず障らず波風立てず。だからこれは……
(きっと波風じゃない)
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