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(こんなにシツコイってことはイジメでもあるのかしら)
漠然とした不安を持ちつつ淡々と応えると、課長は手元の履歴書と私の顔を交互に見て、大きく頷いた。
「分かりました。ではこちらからの質問は以上です。原さんから何か質問は?」
「はい。先ほどは残業があるというお話でしたが休日出勤はありますか?」
念のために確認する。短期派遣だというのに休日出勤まであったら堪らない。そういうことは正社員の仕事だろう。
「ああ、無いない。会社のカレンダー通り」
クマ課長は大げさに手を振った。時折混じる砕けた口調が耳に付く。きっとこっちが普段の言葉遣いに違いない。だったら無理に敬語で話さなくても良いのに。
私は「かしこまりました」と続ける。
「それから前任の方との引き継ぎ期間はどのくらいありますか」
主要な業務は引き継ぎ中に覚えて、あとは空気のように過ごしたい。一年後には私という存在ごと無かったことになるように。立つ鳥跡を濁さずだ。
課長はハンカチで額を拭った。
「確か十九が最終日だから約一ヶ月……か。一ヶ月だね」
(一応ちゃんとしてるんだ)
一年間の業務に対して一ヶ月の引き継ぎは一般的な長さだ。これが急に退職した人の繋ぎだったりすると、引き継ぎ期間――つまり教育期間はゼロとなる。何も分からない新人がいきなり野に放たれるのだ。そして放たれた羊は当たり前だが仕事ができず、「駄目な奴だ、所詮は短期だ」と不名誉なレッテルを貼られてしまう。そっちが短期で採用したくせに、こっちだって好きで短期な訳じゃないと言ってやりたい。
十九日最終、とメモを取った。
「承知しました。ありがとうございます」
「他には?」
私は「いいえ、ありません」と応えた。正社員でもなければ学生の就活でもない。そこまでガツガツと質問をすることもない。駄目なら次を探すだけ。選ばなければ他にも仕事はある。
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