序章

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序章

「ばかばかしい。そもそも視線や気配なんてそう簡単に気付くもんですか! それに、放課後とはいえ人はまだいますから!」 と、新任教師の衛藤は鼻で笑い飛ばした そして、忘れものを取りに自分の受け持つクラスの教室に向かった グラウンドから聞こえる子ども達の声 廊下をかける教師の足音 「ふふふ。こわい噂なんて。こんなにも人がいるのに、一体誰がそんな噂を信じるんだろう。」 怖がる子ども達や古株の教師の顔が浮かんで思わず笑いが溢れた 教室に入り教卓に向かう そして、忘れものを手に取り振り返ろうとした ふと、気配を感じる ん?誰かいる? 振り返ろうとするが躊躇した "決して振り返ってはいけない" いやいや そんな事あるわけない 私と同じで忘れものを取りに来た生徒だ 暑くもないのに汗が落ちる 「だ・・・誰かいるの?」 背後に恐る恐る声を掛けた 返事はない、でもまだ気配は感じる 物音がするわけでもない あんな噂聞いて怖いと感じる自分がいる ばかばかしいなんて言ったのに 返事もないし物音もしない 多少なりとも呼吸音や衣ずれの音が聞こえるはずだ そう、つまり 自分の恐怖心から生まれた"気のせい" よくある話だ やっぱりばかばかしい だってまだグラウンドからは子ども達の声が聞こえる 衛藤は、意を決して振り向いた そこには、気配の主がいた 確かに、いた それから新任教師の衛藤を見た者はいない
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