うしろ

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たたたたたっ 子どもの走る足音が近づいてくる あ、廊下は走っちゃダメって言わなくちゃ 清純ってば置いていかれると思って焦ってるのかな 可愛いなぁ そうだ、今日は清純の好きなハンバーグにしよう 喜んでくれるかなぁ 買い物に行かなくちゃ お菓子も買ってあげよう そんな事をぼんやりと考えていた そして 「おかあさん、おまたせ!」 「ふふっ、きよくん廊下は走っちゃダメだよ〜!」 「は〜い!ごめんなさい!」 「じゃあ帰ろうか 今日はきよくんの好きなハンバーグ作ってあげる!」 「ほんと!?うれしい!!ぼく、おかあさんのことだ〜いすき!」 弾んだ声で近づいてくる息子が可愛くて いままでの恐怖はもうすっかり消えていた 「ふふふっ!お母さんもきよくんのこと だーいす・・・・・・き・・・」 忘れていた まだ一度も振り返っていなかった 背後にはあの気配が戻ってきていた 純恵の振り向いた先にいたのは ボロボロで汚らしい服装 異臭 青白い顔 眼球の消えた目 体も顔も爛れてしまっている 息子と同じくらいの大きさの子ども その子は耳まで裂けてしまった口を大きく開けて ニヤニヤと笑っていた そして純恵の背後から 「あ、おかあさんだ! あれぇ?おかあさん、その子だれ?」 「あ・・・・・・きよ、くん」 息子に手をのばす純恵だったが 清純に届くことはなかった 「え?おかあさ」 「ぼくのおかあさんみーつけた」 純恵は清純の前から消えてしまった ボロボロの子どもと一緒に おしまい
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