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フランは包みを大事に仕舞う。
簡単に手に入ったように思えるが、自分一人では絶対に見つからなかった。
「さてフラン君。ここで、君に一つ教えておきたい事がある」
レオルがコホンとわざとらしく咳をする。
「何でしょう」
レオルは何も言わずドラゴンの腹に再度腕を突っ込んだ。
ゴトッ、ゴトッ、ゴトッ
地面に転がったのは丸石3つ。
「浄化」
呪文とともに顕れたのは、たった今フランが手にした宝と全く同じもの。
レオルが真面目腐り言う。
「こいつの正体は、ドラゴンの胃の中で魔力を取り込み凝固したもの」
「え? それは……」
「幻でも何でもないって事だ。消化しきれず残った胃の内容物。つまり、食べかすだ」
食べかす……
「ちなみに体内にまだ1000個以上ある。討伐ごとザクザク採れるから、こっちでは土産物として安価で流通している」
「土産物」
脱力感に襲われフランはその場に膝をつく。くずおれた拍子に首のチェーンがシャラリと鳴った。
チェーンの先には金色のホイッスル。
それを目にしたレオルは、ハッと息を呑んだ。
「お前、それ」
「……あ、これ。気づきました?お揃いですよね。父の形見なんですけど」
レオルは驚きに固まっている。
「もしかして、これも土産物だとか言います?もう何を言われても驚きません」
「馬鹿! んなわけあるか!」
「でもこれ、鳴らないんです。父が吹いているのも見たことがないし」
これが異世界の物なら、父はどこで入手したのだろうか。
「……父親の、名は?」
「ライです。ライ・ジュレイド」
「……マジかよ」
今度はレオルがしゃがみこむ番だった。
「はぁ、アイツ……何してるのかと思えば、異世界で商人?! しかも婿養子かよ」
「レオルさん?」
レオルが何を言っているか分からない。
「ライが、時渡りに巻き込まれて死んだって?」
そう。 残ったのはこの笛だけだった。
「いや絶対ない。死んでない。アイツがそんなタマかよ」
レオルは立ち上がり、言った。
「話したろ。30年前自ら時渡りして消えた、とんでもない俺の兄貴。他の追随を許さない……ドラゴンハンターの最高峰だ」
「まさか、そんな筈は」
自分にとって父は、奔放とは掛け離れた誠実で実直な商人だった。
「これが幻の秘宝なんかじゃないと、当然分かった上でやっている。……いい根性してるだろ?」
レオルがフランにドラゴンドロップを手渡す。
手のひらで石が淡く光った。
「親子二代でかましてやれ。なぁ、甥っ子」
どうやらフランは、実に愉快だと笑んでいる、目の前の男の話を一度じっくり聞く必要があるようだ。
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