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「身重な嫁さんをもっと労わってやれよ」
「分かってるさ」
ドゥルークは青年にそう言うと、何時もの様に彼を見送りました。しかし、その日以降、青年がドゥルークを尋ねて来る事も日和が来る事も有りませんでした。最初は何かあったのかと心配になり、森の仲間達に青年の事を相談しました。
「なあ、最近アイツが顔を見せないんだ」
「アイツって?」
「♦♦♦だよ」
「♦♦♦って誰だい?」
ドゥルークは最初、からかわれているのかと思い、もう一度同じことを言いましたが森の仲間達は誰も青年の事を知りませんでした。
「何、言ってるドゥルーク。大丈夫か?」
雄鹿が心配そうにそう声を掛けました。
「本当に覚えていないのか!」
「おじちゃん、何言ってるの? 誰のこと?」
子鹿にそう尋ねられ、「だから!」と言いかけた時でした。
(あれ、俺誰の話してたっけ?)
ドゥルークは急にそれが思い出せなくなりました。それと同時に何か大切なものを失った様な喪失感が襲いました。
ですが、それが一体何なのか、思い出す事が出来ませんでした。
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