終章 ── 流れ進むのはわれわれであって時ではない

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  「ヨーコさん、ビッグエアの会場はどう?」 「太一くんが流石のぶっちぎり。ノってるみたいね。あと雄大くんがかなり調子上げてて、そこにハリー達海外勢が張り付いてる」 「モントリオールは?」 「ニコル、パパ達の目がない方が伸び伸び飛べてるんじゃないかしら。雄星くんはもう確定ね。1440を二回成功させた。これは本戦も期待できるわよ」 「ヨシ!」  チームのボスとしての俺はここまで。  この後の俺はただのライダー、喜多川柊だ。  イヤホンを着けベーステントの騒めきをキャンセルし、JIBの音楽、西川くんの声で体を満たして行く。貰ったデモはまだスキャットだらけだけど徐々に脳内を高揚させてくれる。 Am I just alive? (僕はただ生きているだけ?) No No No No matter how skinny(どんなに痩せ細っても) I know I know I know I can live because you are(君がいるから生きていけると知ってるよ) NaNaNaNaNaNa…… Just to be able to be alive NaNaNaNaNaNa…… NaNaNaNaNaNa…… We are not alone(僕らは一人ぼっちじゃないね) We have to be grateful to be alive(生きてる事に感謝しよう) 「………ふふ」  西川くん、大事なのはメロディとサウンドで歌詞に意味はない! なんて言ってたけど、こんなのばっかり書いてるから人間愛に目覚めたなんて揶揄われるんだ。  でも、ちゃんとメッセージは伝わったから。毛細血管の先、細胞の隅々まで沁み渡ってるから。  俺はまだ飛べる。  誰より高く誰より綺麗に─────空へとテイクオフ出来る。  一人ぼっちじゃない。  みんなが見ていてくれるから、最後のステージまで一本一本のランに全身全霊を賭け向かって行けるんだ。  それが『喜多川柊』の生きている証なんだ。
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