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 「お姉様……」  わかってます、と涼花はちょっとぶっきらぼうに。  「天使の翼の、その付け根……」  ──制服の上からなら、本当に少しだけ、少しだけならいいわ。  携帯の画面のなかの海坂ころんの眼が、>< となっている。  翻訳すれば、「もう見ていられない」。  寧音は顔を真っ赤にしているが、涼花もそうだった。  涼花はセーラー夏服の上に羽織った薄手のカーディガンを脱ごうとした。  「ううん、お姉様、お風邪をひかれてはたいへんですから」  寧音はゆっくりと、涼花の制服、セーラー服とカーディガンのあわいに右手を入れた。そして(てのひら)を上へとすべらす。  寧音はお姉様の肩甲骨(けんこうこつ)を偏愛していた。  素肌で見たことは当然ながら一度もない、けれどなぜか蔓薔薇のように、心や本能が刺戟される部位。  左側をやさしく触り、次に右側へと。寧音はやさしく涼花の肩甲骨を触覚で()でた。  セーラー夏服の、ポリエステルツイル素材の上でも、涼花の肩甲骨は天使の翼の付け根、とても愛しい。いつになるのかはわからないものの、いずれ、お姉様の背中をじかに見る日が来るのだろう。
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