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4
「お姉様……」
わかってます、と涼花はちょっとぶっきらぼうに。
「天使の翼の、その付け根……」
──制服の上からなら、本当に少しだけ、少しだけならいいわ。
携帯の画面のなかの海坂ころんの眼が、>< となっている。
翻訳すれば、「もう見ていられない」。
寧音は顔を真っ赤にしているが、涼花もそうだった。
涼花はセーラー夏服の上に羽織った薄手のカーディガンを脱ごうとした。
「ううん、お姉様、お風邪をひかれてはたいへんですから」
寧音はゆっくりと、涼花の制服、セーラー服とカーディガンのあわいに右手を入れた。そして掌を上へとすべらす。
寧音はお姉様の肩甲骨を偏愛していた。
素肌で見たことは当然ながら一度もない、けれどなぜか蔓薔薇のように、心や本能が刺戟される部位。
左側をやさしく触り、次に右側へと。寧音はやさしく涼花の肩甲骨を触覚で愛でた。
セーラー夏服の、ポリエステルツイル素材の上でも、涼花の肩甲骨は天使の翼の付け根、とても愛しい。いつになるのかはわからないものの、いずれ、お姉様の背中をじかに見る日が来るのだろう。
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