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最初に寧音が涼花の肩甲骨を、フェティシスティックな眼で見るのを意識したのはけっこう前だった。涼花が身体にぴったりとフィットした、ヒステリック・グラマーのトップスを着てデートしたとき──。
ふと、お姉様の背中を見たときに、ピンクの生地を盛り上げている肩甲骨が官能的に見えたのだった。
ほんの数分を数時間にも引き延ばそうとする寧音の息が荒くなってきた。
そろそろ空が暗くなる、帰らなければいけない刻限に……。
──カシャ、と写真機のシャッター音が聞こえた。
慌てて寧音は手を戻そうとするも、涼花の肩甲骨を撫でているところを撮られてしまった。
いつの間にか、薔薇園の入り口に、古いカメラを首から提げた生徒が誇らしげに立っている。
エス、百合のカップルからは蛇蝎のごとく敬遠されている新聞部──海坂かわら版の写真担当、富岡きみこだった。彼女はこのご時世にまだ生き延びている銀塩写真、それもモノクローム、フィルムはトライXにこだわる強者である。
「はい、いい絵が撮れました! お二人ともだんだんエスは卒業に近づいているのかしら? モノクロームでも丸わかりの顔の真っ赤さ、本物ね」
「ちょっと! 盗撮は卑怯よ!」
寧音が抗議した。
「頼み込んだら許可してくれるの? しないでしょ」
「だからってなんでお姉様とわたしを撮るの?」
──薔薇園で愛を確かめ合うカップルなんて、レトロスペクティヴで絵になるわよ。
「富岡さん、お願い、そのフィルム感光させて」
「ご免こうむります。では、お邪魔なようで失礼します。どうぞ、続きを」
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