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昼と夜で
「考えてた、ずっと」
「わ、私も!」
絵理子は、感動していた。
このドラマチックな風景の中に、二人は溶け込んでいる。
ついに、この昼と夜が入れ替わる瞬間に、結ばれるのであろう。
男は、絵理子の両肩を掴んだ。
(き、来た!)
絵理子は、目をつぶり、唇を少し突き出した。
ファースト・キスを、この男に捧げるのだ。
が。
「昼と夜の間は、ひょるだ!」
男は、顔を明るくして言った。
絵理子は、魂を抜かれたようになった。
「は?」
「ひょるだ、やっぱ。黄昏時とかより、ひょるのがいいわ。お前も、そう思うだろ!」
男は、森でオオクワガタを見つけた少年のような笑顔で言った。
バカッ
絵理子の右フックが男の顔面に炸裂した。
「思うわけねぇだろ! バカタレ!」
絵理子は一人、展望台を掛け降りて行った。
~終わり~
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