第1夜 奇

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クロックスを突っ掛けてしぶしぶ外に出る。 満開だった桜はいつの間にか緑に変わっていた。 だらだらと歩いていると、 木々の切れ目に鮮やか朱色を見つける。 近寄れば、大きくそびえ立つ鳥居が現れた。 「こんな都会の真ん中に、大きな神社があるなんてちょっとラッキーかも」 「ちょっと中を覗くくらいなら、アイス溶けないよね?」 右手のコンビニ袋を振り、アイスが十分に冷えているのを確認すると、立派な鳥居をくぐった。 境内は思いのほか広かった。 参道の両脇には、隣のビルと同じくらいの高さの木々が並んでいるし、拝殿の脇には大きな池もある。 境内を散策する人もちらほら目についた。 「やっぱり、お参りしていかないと失礼だよね」 境内を一周回って拝殿の前に立つ。 ポケットをまさぐった。 「よかったぁ。小銭ある」 赤褐色の平等院鳳凰堂を賽銭箱に投げ入れ、 ぎこちない礼の後に、両手を合わせて目を閉じる。 『神様、どうか素敵な殿方に会えますように』 内なる煩悩をこっそりと打ち明ける。 「よしっ、また明日から頑張りますか」 大きく伸びをした後、少しすっきりした気分で、参道を引き返していれば、ふと脇のおみくじが目に留まった。
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