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「…………!…………!!ウォルター!」
気付けば島の中心にある王宮と住宅街で出来ている南地区のを繋ぐ大通りを南下していた、左右に建つ店たちで分かるがもうすぐ俺の家に着く頃でもある。
「!……ああ…悪い…なんだ?」
「なんだじゃないですよ!……んもう…明日の放課後に生徒会室に来てくださいって話です、いいですね?ウォルターの進退に関わる話です」
あー、と後頭部をかきながら言葉を濁す、何か考えていたのは分かって当然として問題は俺が考えていたことを追及されては困る。
アリアには正面から目を見て嘘をついても10年目にもなる付き合いだからこそ嘘だとバレるだろう。
「ああ…それなら行くしかないか……」
「バックれようって考えてましたね…?」
「…まぁ…な」
深々とため息をついて言った、
「それはそうと、何を考えていたんですか?」
聞かれたくない所をやはり聞かれた、さてどうするかと黙考していると、
「私にも言えないことですか?」
「そうだな、お前らとかには関係無いことだしそうだな。それはそうともうこんな時間なのか、アリアお前…」
時計を一瞬見やり時間を確認すると再び空の星を見ていた。それでも事実は変わらない、夜の11時を越えていた。
アリアは俺の言葉の前半にかなり心外に感じたようでわざとらしく、いつもなら意識などしない上目遣い、いつもなら大人のような眼差しが少女っぽい眼差しに変わり、
「もうこんな遅い時間ですし…貴方の家に泊めて下さらないかしら…?」
「ふざけるなって、それで世の男の子を勘違いさせるようなことはするんじゃないっての」
頭を少し抱えそうになった俺は逃げるように空を見続けた。
「ふふっ、そうですね。それでは、また明日」
そんな話をしているうちに俺の賃貸がある裏路地に着いた、少し残念な眼を浮かべながらアリアは言う。
「じゃあな、夜遅いし気をつけろよ」
その一言で別れ、ウォルターは街灯の届かない路地へと消える。その中で誰に言ったわけでもなく、ただポツリと呟く。
「俺は……お前を利用してるのにな…」
その先の何か大事な言葉は何故か出てこなかった。
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