第2章:落第竜騎士

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 ウォルターはその先、一昨日言えなかったの大事な言葉をまたしても言えなかった。 「その先は言わないでください!もういいです!イオ、ウォルターと一緒に出て行ってください。報告の件は私がどうにかします」  それはアリアが受け入れたくないと心から言っている。その意思表明は余さずウォルターに伝わる。やはり、ダメだったと。 「はい。わかりました、では行きましょう」  出て行けと言われてそれに従わない訳にはいかない。入って右の壁際、本棚がありその前に立っていたイオはアリアの正面に座るウォルターと共に部屋を出て行く。  アリアは、どうにかする。そう言ったあたりウォルターを退学させないようにするらしい。彼からすればむしろ、自分自身の存在のせいでアリアは不安定になっているのなら、自分がアリアの前から消えて復讐を速く終えてしまえばいい。そう考えていたからこそ受け入れようとしたのに水泡に帰した訳だが。  部屋を出て授業の始まった教室に向かう中、イオから早速苦言を呈される。 「ウォルター先輩はアリア先輩のことになると不器用で、それでいて不器用なりに大切にしているのは分かります。けど、今回は急ぎ足過ぎではないですか?それに怒っている人にさらに怒らせてどうするんですか、きっと泣いてますよ。後で謝りに行ってください」 「諫言はありがたいが、急がないとダメなんだよ。俺にはもう学園に居られる時間も少ないしアリアのことを第一に考えるなら…」 「急いては事を仕損じる、ですけど、ゆっくり急げ、そうも言いますしね」  イオはあくまでも俺を諌めるだけのようだ。歩く速度も無意識に早くなっていて、その焦りはあのガキを相手にした時よりも焦っていた。 「アリア先輩のこと、大切なんですね」 「まぁな、家族よりも大切かもな」  そうですか、ならちゃんと謝ってくださいよ。そうぼやくイオ、ふたりは校内を歩いて行く。
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