第2章:落第竜騎士

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 その頃、時を同じくしてシエナは、教室で既に頭に入れてある知識が話されている。そんなことよりも考えていたのはウォルターと呼ばれる少年のこと。  今までよりも会う機会がガクッと減ったのは事実だが、それでもアリアと一緒に行動しているとよく鉢合わせる、それすらもアリアは必然的になるように行動しているのだろう。  アリアが自分に、ほら、当たったでしょう、と微笑むだけで。彼の言いたいこと全てを理解して優しく諭したり、激情に身を委ねていても忘れず諭す時も。何故だかアリアに心の何処かが密かに強く反応してしまうこと、それすらもよくわからない。ただ、察しの良い後輩で居たいと思っている、だからなのかもしれない。  しかし、最近仲の良い親友、悪友、どちらとも言える友人から、好きな人はいないの?と質問されて答えられず、そこから気になる人の特定に入りと以下は省略するが、友人にはそれは恋なのではないのか、と言われたのを皮切りに、シエナは今日まで堂々巡りの物思いに嵌りこむ。  アリアの笑顔、それを見る度に頭をよぎるのは黒髪の少年、ウォルターは今どうしているのかが気になってしまう。  もちろんどう足掻いたって彼の心を手にすることは出来ないと判っている、初めて六二一(ロクニイイチ)小隊を見た時からずっと。  それが()()なのか()()なのか、疑問は解けていない。
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