第3章:戦う意志と、逃げる意思。

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 体型は普通、むしろやや痩せ気味か、出で立ちは白衣にワイシャツ黒いヒールに黒タイツとモノクロのファッション。ヒールは煩くない程度に鳴らし歩く。顔は幼く10代半ば程で、美しさより可愛さが目立つ童顔。柔らかな栗色ストレートのロングで前髪は眉と目のあたりで切り揃えて、右耳を出すためか髪をピン留めしており、一見どこにでも居るような女性。  普通から遠ざけているのは、腰に下げる細剣(レイピア)。鞘も柄も傷だらけだった、それでもいくつも直した跡がある、刀身は見えないがそのレイピアをどれ程長く使ったかが窺える。 「いやぁ…君に効きそうなのが無くてねぇ…何でこんなに暗いの?あっそっか君が居るからか、えへへ」  グラインダーを上げて日の光が差し込んだ、その明るく無邪気な笑顔をソファーに座る彼へと向ける、態度も見た目も10代ほど、見方によってはまるで生徒だ。 「態度だけで見れば職員とは思えませんよ、あと、今の発言は二重の意味で失礼ではないですかね?」  声のトーンも低く、無愛想に問う。  言われた相手は図星であったのか逡巡した後、すぐに言い返す、 「気のせいだよ、私は君を尊敬してるから」  言葉とは裏腹に棒読みであり、目の前の少女と見間違う女医はやや不機嫌そうであった、無論、彼がそれを汲み取っても、気遣う理由にはならないのだが。 「そんな君の物言いだから気に入ったんだけどねぇー…それじゃあ、お友達居なくなるよ?」  悪巧みする子どものように言ってのける彼女、少年はそれを苦く笑うのみであった。一言添えて、 「別に構いませんよ、俺は」  そぉ〜。と含み笑いを隠さない女医はそれ以上無駄話はせず、この辺りでは当たり前の茶色の麻袋から貼り薬などを取り出し、慣れた手つきで処置していった。  
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