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カナセの発言にウォルターはため息をつき、
「そんな誤解だけ生む言い方されると困るんですけど、先生、てかお前それを信じるなよ…」
ウォルターの指摘に対して、直ぐさま否定したアンネであった。どうやら人の恋話は得意な方ではないらしい。
「あ、あたしは別にそんなこと思ってないわ、アリアじゃなかったら誰が君のこと好きなのよ?」
平静を装ったつもりでいるアンネは否定だけしたが、それはウォルターにとっては今、喧嘩しているアリアとの話を引き合い出されるのは心苦しいものだった。
「そうだな、それで先生、この袋は貰って良いんですよね?」
軽くあしらいカナセに問いかける。
今や10分以上、遅れて待たされた不満などアンネの話でどうでもよくなっていた、するとカナセは、
「うん、いいよー。ところでアンネちゃん、君、"小隊"はどうしたの?」
その発言はウォルターの心に、勧誘するべき、という警鐘で徐々に心の雲は晴れ始める。アンネは対照的に曇り始めているのだった。、ただカナセは心苦しく思っていた。それでも聞いたのはそれがアンネのためになると信じたから。
「ええっと、今じゃないとダメですか?これから航空技術のレポートを…」
だめっ、と拒否。そして質問に首肯するカナセ。
これはもう確定したな、思うウォルター、もちろんそれは、アンネが小隊を辞めたのだろうと決め付けたもの。
「だって私はこの学校のカウンセラーですもの、まぁ今のは全然関係ないんだけどねー…それで、例えマヌケな少年が居たところでこれは世間話みたいなものよ。そう、世間話。何ら問題の無い世間話」
何度も頷き、屁理屈を並べるその様はただの子ども。今年で22歳にもなる大人の態度とは思えない。
アンネはただ諦観したようで、あからさまなため息ひとつに喋り出す、
「先週「脱隊届け」を出しました。今は」
そこで言葉を濁したアンネ、目の前の女医は聞いた。
「なるほど、じゃあアンネちゃんは今小隊をお探しかな?」
声のトーンをわざとらしく少し下げ、探偵を気取ったような、口調で尋ねた。
流石にもう言い逃れは出来ないと、観念したアンネは、まあそうですけど、と渋々頷く。
するとアンネには意外なことにウォルターが真剣な表情で見つめてきたのだった。
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