第3章:戦う意志と、逃げる意思。

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「ただのスポーツテスト」  どれほど間抜けな顔をレクシィーは晒したか分からない。そんなことが必要なのか、理由が分からなかった、もちろんそれをウォルターは理解しているようで、 「技術云々(うんぬん)は訓練してけば分かるだろ、それは大して重要じゃなくて、体力があるかどうかなんだ。  じゃなきゃメニューも考えられない、出来る範囲でやるにしたって、ギリギリまで頑張ったってな」  済ました、それかやさぐれたと見える顔で話した、だがちゃんと聞いていたのはレクシィーだけ。  マイナは、そんな話はどうでもいい、とばかりに退屈そうで、マリーは既に機材から興味を無くし蝶を観察しており一切聞いていない。  「まあいいか」と諦めたウォルターだったが、レクシィーはただ、自分はもっと威厳を見せた方がいいのでは?と地味な苦悩をしていた。  その直後のこと、マリーが戻ってきて、 「ねぇお兄ちゃん、これ何?」  ヒョイっと持ち上げたのはコの字型の段ボール、途中より無関心だったマイナが説明した、 「そいつは長座体前屈の時に押すやつだ、ほら新学期のスポーツテストあったろ?」  「へぇー」と眺めるマリーはすぐに次々とマイナに質問攻めをする、レクシィーはホッとしながらマイナだけに答えさせるわけにはいかない、と持ち前の責任感を持って説明に加わる。  ウォルターはその様子を見て少しは安心した。  レクシィーを慮ってマリーと話を少し盛り上げるマイナ、レクシィーが何故か元気が無いと気づいたマリー。  少なくとも全く周りが見えず、ただ自分のことしか見れてない竜騎士ではないと知れただけ大きな収穫と見ていい。 「じゃあ、あらかた説明したみたいだな、まずは握力からやるか。マリーいいか?竜化しないで"片手でグッと握るんだ"それを両手ともやる、まずは実践してるのを見たほうがいいな、マイナから」  3人に寄って行き、彼女らが取り出し置いた握力検査器を取ってマリーと同じ目線に立ってやり方を教えた、そして彼の隣にいたマイナに握る部分を向けて渡す。
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