第3章:戦う意志と、逃げる意思。

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 すぐに握って離した、針は「43kg」そこで止まっていた、ウォルターに突きつけられたそれを八〇六のふたりは意味こそ違えど驚嘆していた。 「左…43キロ…よし、反対も頼む」  クリップボードの下の方に何か書き入れていた、察するに握力の記録だと思われる。  右手の握力は6kg増えて、「49kg」と、天空島で竜騎士を除いた、二十代男性平均に迫るものだった。 「ほらよ、人にやらせるんじゃなくて自分でやれば良かったろ」 「まあまあ、俺が測っても意味無いし、それにこれはレクシー達のためだからな」  「理屈だけで言えばな」と煽るように言うマイナ、それに続いたようにマリーは「お兄ちゃんのも気になる!」と地味に食い気味だった。 「全く…俺がやっても意味無いって言ってるのに…やるけど」  マイナだけであれば断るつもりがマリーまで賛同(?)されてはウォルターとて断りにくい。  「仕方ないな」苦笑とも微笑み、どちらともつかないまま、右手を測る。 「82キロ…落ちてる…?な」  三者三様の驚き方だった。マリーは「すごいすごい!」と声に出して褒める。  一方で、レクシィーとマイナは声には出さないが驚いた顔でまじまじと、ウォルターを見つめた。  とても学生とは思えない握力だが、竜騎士を目指す上では特筆している訳ではなく、あえて言えばそこそこ高い方。  ()()()、その発言だ、一体何故それでも落ちたと言えるのか、とふたりは羨望の目で見据えるのだった。 「あ、言ってなかったか?」  困った声を出したのは語るまでも無くウォルター。  意図せず、後出しジャンケンのように驚かせてしまったことを申し訳なく思ったのか、話し始める。 「俺の武器は魔砲剣(まほうけん)で60キロくらいあるから、これくらいないと竜化しても十分に使いきれないなくてな」  マリーひとりだけが「?」と目に見えそうな理解出来ていない顔を見せる、とても13歳には見えない、もう少し幼いのでは錯覚しそうになる。 「じゃあ順番に始めるぞ、俺は動かないけど、レクシィー達は動くからシャワールーム閉まる前に早く終わらせよう。俺も早く帰りたいし」  後頭部を掻き、箱から機材を引っ張り出していくのだった。
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