♯3 サンセット カプチーノ

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──── 「永遠、何か飲む?」 「ん……飲む」 「何がいい?」 「カプチーノ」 「カプチーノ!? あったかなぁ」 笑いながら、浬がキッチンの戸棚を開ける。 布団の中は籠もった湿気と、事後の空気と。 懐かしい浬の匂い。 胸いっぱいに吸い込んで吐き出す。 今更襲ってくる気恥ずかしさに、顔を枕に埋めた。 ふと、指先が枕の側に置かれていた硬い何かにあたる。 「んー……本、か。また難しそうな本……」 勉強なのか、趣味なのか、内容は相変わらず植物の遺伝子がどうたらこうたら。全く理解出来そうに無いページを何の気なしに捲ると、栞代わりに挟んでいたのか、何かがヒラリと落ちた。 「あ……」 しまった、と拾いあげて、息を止めた。 「はい、お待たせ……って、何見つけてんの」 カプチーノが入ったマグカップを俺に差し出しながら、浬がきょとんとした顔を向けた。 「俺……これがいいな」 本の間から落ちてきたのは、一枚のポラロイド写真。フォトパネルと同じ、サンカヨウを撮影したものだった。 色味も画質も、フォトパネルよりも粗くて……だけど──── 「え、それ、だって……ポラで撮ったやつ」 「いいんだよ。これ、俺に頂戴」 見上げた浬の顔が、柔らかく綻ぶ。 「いいよ。けど……引くだろ?」 気まずそうに浬がカプチーノを飲み込む。 「……引いた……死ぬほど嬉しくて」  熱くなった顔を隠すように、俺も俯いてカップに口をつけた。 「それ、褒め言葉?」 「そう。最大級の」 「じゃあ、永遠は?」 覗き込んできた浬の目が優しく笑う。 伸ばした手でシャツを引っ張ると、一呼吸分のキスをした。 「俺も……死にそうなくらい、会いたかった」 「はは、両思い」 「ん、遠回りの」 「俺のこと好き?」 「……好き」 「っ、素直」 「今日だけ」 「明日は?」 「どうだろ……」 「永遠」 「ん?」 「好き」 「……うん」 「照れてやんの」 「ばか」 「今日、泊まってけば?」 「うん」 55474f9f-5f4b-44e2-9e50-b092a958deed  「死にそうなくらい、あなたに会いたい(I’m dying to see you )」 fin
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