203人が本棚に入れています
本棚に追加
「今日ライブラリーカフェで、俺に怒ってた子、教育学部の子なんだよ」
「だから?」
声が震えた。
「増本伶菜ちゃん、付き合ってたんだろ?」
「浬に……関係ない」
バレる。全部。
「あの子狙ってる奴、めちゃくちゃいるのに、なんでセックスしなかったの?」
「っ、」
「それとも、出来なかった?」
じっと、ただ射抜かれるような視線に、怖くて。それなのに、思考が麻痺したかのように現実味がない。
「高校の時にさ、すごく俺に懐いてくる後輩がいたんだよ。その子が向ける視線が、どことなく永遠に似てて、」
「俺はっ、そんな話聞きたくない!」
どうせバレてしまうのなら。
もっと前の方が良かった。
いっそ中学の時なら、離れた時間だけ心の修復だって早く出来るのに。
「そのすぐ後に、その子に告白された。だけど断った……その子が男だったから」
こんなの、あんまりだ。
「それで気付いた。永遠が俺を見てた目は、単なる友情だけじゃないんだって……違うか?」
「今さら……俺は何も……言うつもりは無い……帰るから、そこどいて」
動揺で呼吸が乱れる。
浬の体横のドアレバーを掴む。
「どけって!!」
動かない浬を無視して、扉を力任せに押し開けようとした手首が、下から掴み上げられた。
「ちょっ、」
くるりと、浬と入れ替わる形で、俺の背中が扉に押しつけられる。大きくて力強い浬の手に囚われた手首は、ぴくりとも動かせない。西陽が眩しくて、浬の表情がわからない。
最初のコメントを投稿しよう!