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「今さらってなに? 今は違うってこと? 俺と離れてる間に、永遠はもう誰かに抱かれたわけ? いや、抱く方?」
浬の言ってる意味が分からない。
なにを考えているのか分からない。
心臓だけが早鐘を打ち続ける。
「何が言いたいんだよ!」
「悪いけど、永遠がそうやって何も言わないつもりなら、俺は勝手に勘違いして、勝手に進めちゃうけど、それでいいんだよな?」
「は、何言……あ、ちょっ」
躊躇いなくジーンズの内側に差し込まれた浬の手が熱に触れる。首筋に、浬の唇が這う。
「なっ、ばかっ、なにやって!」
「セックス」
「はあ?」
「なあ、俺なら勃つ?」
口から心臓が出そう。熱くて、俺の乱れた呼吸が、首筋に吸い付く浬の肩に落ちる。
一体何が起きているのか頭で処理しきれない。それなのに、浬の手でゆるゆると布越しに擦られたそこは、あっという間に硬度をもつ。
それが、罪悪感を増幅させる。
情けなくて、泣きたくなる。
俺は友達だと偽って、浬のそばにいたわけじゃない。だけど、それさえも否定されそうで。嫌われそうで。
力任せに浬の肩を突き飛ばした。
「浬っ……待って! ほんとに、こんな悪ふざけ、やめろよ……だって、浬は違うだろ?」
浬はこっち側じゃない。
「違うって、何が違うんだよ。俺と、永遠と、何が違う? 60%の水分と、有機物で出来てる。何も違わない。区別したがるのは、人間の悪い癖だ」
「そういうことじゃなくて……俺はっ!」
口に含んだ言葉を、外に出せない。
俺は親友の、男の、浬を好きになってしまったんだ。
それは普通じゃないんだって、嫌になる程分かってる。
「俺はね、女の子が好きなんだ」
静かに、ただ、静かに。
浬の唇がそう動いた。
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