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「で、どっちがいい? 俺のこと抱く?」
俺をベッドに押し倒しておきながら、浬が飄々と訊ねる。俺は浬と触れ合えるなら、なんだっていいけど。
「え、本気で選んでいいの?」
「とか言いながら、そういう顔されると、もう一択しかないけど」
「うん?」
「抱かれたいって顔」
「っ、ほんと、ばか!」
好きな植物でも観察するように、俺の目をじっと見据えてくる力強いダークブラウンの瞳。
俺だけを見てくれたらと願っていたその色が、目の前にある事実に、身ぶるいしそうだった。
見つめられたまま、浬の左手がシャツの裾から侵入してくる。反射的に体がぴくりと跳ねる。
「う……」
「はは、緊張しすぎ」
失笑する余裕の笑顔に腹が立つ。
ずっと好きだった奴に、こんな風に触られて緊張しない方がおかしいだろ。
腹部を上がってくる浬の手の平は熱くて、登山のせいなのか、見た目よりもごつごつとした男らしさを感じる。
胸元までたどり着いた浬の指先が、僅かに隆起する先端に触れる。
「ん……それ、くすぐったいって」
「永遠の身体のいいところ、ちゃんと調べたいから色々触らせてよ」
身を捩って嫌がる俺なんて、はなから気にとめる様子もなく、胸の先を弄り続ける。
マイペースで、恣意的で。
一見そう捉えてしまいそうな行動も、俺の表情を確認しながら、慎重に触れてくる温もりに、浬の優しさが伝わってくる。
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