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この枠取られた世界がこんなに生き辛いなんて感じたのは、いつからだっただろう。
きっと、生まれた時から俺はこっち側だったのかもしれない。
「んなこと言うなって。俺は何度住野が別れたって、何度でも住野を紹介するからな」
「それじゃあ、まるで俺が別れるの前提って感じだな」
「だとしても。住野の良さがわからん女は恋人として失格だ」
「だから、なんでそうなるんだよ」
苦笑する俺を横目に、道上は鼻を鳴らして自信満々に笑った。
「一年の時さぁ、彼女にフラれたばっかりなのに俺とひろみちゃんを引き合わせて、付き合えるまで色々世話してくれただろ? 自分が辛い時に他人の恋を応援できる奴は、この世で最も穢れのない崇高な人間だと俺は思うんだよ」
「はは、なにそれ」
“穢れのない”────そんなわけがない。
俺は一体、何人を騙して、傷つけてきたのだろうか。
水面ぎりぎりのところで、窒息しない程度に。だけど姿は見られないように生きていれば、自分の中の異常が露呈することは無いと信じていた。
それでも身近な人間だけは、例えばそれが友人であれば尚更。
いくら隠し通せたとしても、抑えていた気持ちが生々しく湧き上がって、その度自分の気持ち悪さに泣きたくなった。
友人を、しかも男を。
俺は目で追って、意識している事実。
周りと同じように女の子を好きにはなれず、抱けない事実。
それは決して誰にも知られてはいけない俺自身のバグであり、だからこうして女の子と付き合っていれば、いつかそのバクは修復されると信じてやまなかった。
「じゃ、俺次あるから行くわ」
「ん、いってらっしゃい」
だけど、結局その時が来れば俺は彼女を抱けないわけで。
適当な理由をつけてその場を凌げても、最終的には不信感だけを植え付けてフラれる。
そんなことを繰り返す自分も嫌で仕方無かったし、どうして俺はみんなと同じじゃないんだろうと、無意味な自問自答を続けるのも疲れた。
だからもう、この先ずっと、一人でひっそりと生きられたらそれでいい。
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