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「はい、メンチカツは十五パックですよね?」
かき揚げが焦げないように気を付けながら、振り向いて応える。
「その日、わりと売れたのよ。なのに、どうしてもっと多く作らなかったの?」
背中を向けていた松木さんがやっと振り向き、その眼鏡の奥から私を睨み付けてきた。
「……先週の木曜日は私は休みだったんで、違う人が担当だったはずですけど」
松木さんは、私が出勤していたと勘違いしていたのだ。
「あ、そう」
そう言うと松木さんは勢いよく前を向き、コロッケが入ったパックの両端にセロテープを貼り始めた。
……勘違いしていたのたなら、そう言えばいいのに。
自分のミスは一切認めないのよね、この人。
……胃が痛い。
あーあ、私生活でも人間関係をミュートできたらいいのに。
ま、無理か。
年頃の息子さんの彼女も、松木さんが姑になる事に抵抗があるから結婚に踏み切れないでいるって、別のパートさんから聞いたわ。
正月に息子の彼女が自宅に来た時に、長女(長男の妹)に挨拶しなかったように見えたから、腹が立ったって言ってたわよね?
「お雑煮を作るのを手伝ってくれたのはいいんだけど、気に入らなかったからずっと無視してたの」って。
中学生なの?あなたはほうれい線くっきりの女子中学生なの?
女っていくつになっても底意地が悪いから
、嫁姑問題が無くならないのよね。
でも私は大丈夫。
息子はまだ大学生だけど、将来お嫁さんを連れてきても私は絶対に辛くなんて当たらないし、愚痴や悪口を言ったりしない自信があるわ。
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