復讐代行宝飾店~ミュートできるマジェステ~

11/28
前へ
/28ページ
次へ
「はい、メンチカツは十五パックですよね?」 かき揚げが焦げないように気を付けながら、振り向いて応える。 「その日、わりと売れたのよ。なのに、どうしてもっと多く作らなかったの?」 背中を向けていた松木さんがやっと振り向き、その眼鏡の奥から私を睨み付けてきた。 「……先週の木曜日は私は休みだったんで、違う人が担当だったはずですけど」 松木さんは、私が出勤していたと勘違いしていたのだ。 「あ、そう」 そう言うと松木さんは勢いよく前を向き、コロッケが入ったパックの両端にセロテープを貼り始めた。 ……勘違いしていたのたなら、そう言えばいいのに。 自分のミスは一切認めないのよね、この人。 ……胃が痛い。 あーあ、私生活でも人間関係をミュートできたらいいのに。 ま、無理か。 年頃の息子さん(長男)の彼女も、松木さん(この人)が姑になる事に抵抗があるから結婚に踏み切れないでいるって、別のパートさんから聞いたわ。 正月に息子の彼女が自宅に来た時に、長女(長男の妹)に挨拶しなかったように見えたから、腹が立ったって言ってたわよね? 「お雑煮を作るのを手伝ってくれたのはいいんだけど、気に入らなかったからずっと無視してたの」って。 中学生なの?あなたはほうれい線くっきりの女子中学生なの? 女っていくつになっても底意地が悪いから 、嫁姑問題が無くならないのよね。 でも私は大丈夫。 息子はまだ大学生だけど、将来お嫁さんを連れてきても私は絶対に辛くなんて当たらないし、愚痴や悪口を言ったりしない自信があるわ。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加