4人が本棚に入れています
本棚に追加
++
「胃の中が荒れていますね」
休日、病院で胃カメラを取った後、医者がパソコンの画像を見ながら淡々と語った。
「処方箋を出しておきますので、四日以内に薬局に行ってください」
「……分かりました」
胃炎か。やっぱりストレスが原因なのね。
きっと、いつも人に気を遣いすぎてるから。
私って絶対にHSPよね。
会計を済ませた後、病院の正面玄関を出て、敷地内の階段を下り、少し離れた場所にある薬局へと向かう。
薬を飲んだら少しは楽になるのかしら。
辿り着いた薬局のガラスの扉の前に立つ。
自動ドアの無機質なウィ……ンという音が、小さく響く。
私は保険証を財布に仕舞いながら、ドアの向こうに足を踏み入れた。
「お待ちしていました、谷町様」
……え?
薬剤師だと思ってうっかり処方箋を渡してしまった長身の男性は、白衣を着ていなかった。
どうして私の名前を?
あ。きっと処方箋に書いてある名前を見たからよね?
「いいえ。ここに来られる前から、私は谷町様のお名前を存じておりました」
そんな事ある訳ないじゃない。
綺麗な顔をしているだけあって、気障な人ね。
というか、どうして声に出していないのに考えている事が分かるの?
最初のコメントを投稿しよう!