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「唐突ですけどマリアさんはアブル島の出身ですよね」 「え? どうしてその事を」  マリアは風見の言葉に驚いてその顔をまじまじと見た。プロフィールには書いていない事だ。一緒に本土に来たアリスともども誰にもアブル島の話はしていない。   「島の話を聞きたいんです」    アブルの話は禁句だ。  アブル島には隠し事という簡単な言葉では表せない奇異な事柄がいくつもある。それを遥か昔から奄美の島が盾となって守ってくれているのだ。世間がアブル島の内実をつぶさに知れば大騒ぎになる事は明白である。    それにしてもどうして風見がその事を知っているのかマリアはまだ驚きを隠せないでいた。 「なぜ風見さんはその事をご存知なんですか」 「実は僕の母もアブル島の出身なんです。母もマリアさんと同じ赤紫色の髪をしていました」 「お母さまは今は……」 「島に帰ったと父に聞きました」 「それってもしかしたら、シオンさんの事ですか」 「え?! ご存知ですか、母の事を」 「アブルは小さい島です。島民同士知らない者なんて一人もいません」 「母は元気なんでしょうか。僕が十歳の時に別れたままです」  アリスは答えた。 「一度島を出た者は、他の島民のように長生き出来ません。わたし達はそれを覚悟の上で出て来たのです。でも安心して下さい。一度島を出たとしても本土の人と同じくらいには生きますから。だからシオンさんはまだ元気でいらっしゃいますよ。ここにいらっしゃった時とは随分違う姿になられたと思いますけど」    
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