孤島

2/4
前へ
/18ページ
次へ
「サーシャ様、わたしとアリスはもう二十歳になりました」 「ええ、それが何なのですか、マリア」 「わたし達は外の世界を見てみたいのです。どうか島から出る許可を下さい」 「あなた達ニ人とも、分かっているのですか、島を出る事の意味が……。何度も言った通りにこの島を一歩出たら、あっという間に穢れてしまいますよ」 「サーシャ様、わたし達二人、覚悟は出来ています」 「全く聞き分けのない事を。 これだけ言っても分からないのなら……ああ、仕方がありません。もうよろしいでしょう。もう引き止めるのはやめましょう。どうぞ行っておしまいなさい。オギオに明後日、船を出すように伝えましょう。それで奄美の島に渡れば良い……。そこに行き着く時にはもうすっかり穢れているでしょうけれど」  若い娘はサーシャの戒めの言葉も意に介さずに、雲雀(ひばり)のような愛らしい声を上げた。 「サーシャ様、ありがとうございます!」  マリアとアリスの二人はこれで晴れて島を出ることを許された。サーシャは話は済んだとばかりに徐に立ち上がった。その時サーシャの足元から二人に向かってザッとひと塊の風が舞い上り、彼女らの長い赤紫色の髪を巻き上げた。アブルの花粉の粒子を含んだ風は、もう一度島に留まらせようと、甘い匂いを彼女らの鼻先に漂わせた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加