孤島

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 陸風から海風に変わり海は凪いでいた。  南国の燃えるような日の出とともに、二人の娘がアブルの島を旅立とうとしている。 二人はオギオが奄美の島で適当に買い求めてきた、全くサイズの合わない、花柄のワンピースを着ている。見送るものは野良猫一匹とていない。 「じゃあ出発するぞ」   オギオが二人の意思を確認するように、視線を二人にまっすぐ伸ばして野太い声を出した。  長年太陽と潮に晒されたオギオの褐色の肌が、朝日を受けて(なめ)した動物の革のように照っている。 「いいんだな」  再び念を押すようなオギオにマリアは、 「オギオのおじさん、わたし達は嬉しくてたまらないの、早く出してちょうだい」  と、未知の世界に飛び込むにはあまりにも無防備で、無邪気な声を上げた。  船は漕ぎ出した。  奄美の島に着く頃には太陽は真上に登っている事だろう。  
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