7人が本棚に入れています
本棚に追加
陸風から海風に変わり海は凪いでいた。
南国の燃えるような日の出とともに、二人の娘がアブルの島を旅立とうとしている。 二人はオギオが奄美の島で適当に買い求めてきた、全くサイズの合わない、花柄のワンピースを着ている。見送るものは野良猫一匹とていない。
「じゃあ出発するぞ」
オギオが二人の意思を確認するように、視線を二人にまっすぐ伸ばして野太い声を出した。
長年太陽と潮に晒されたオギオの褐色の肌が、朝日を受けて鞣した動物の革のように照っている。
「いいんだな」
再び念を押すようなオギオにマリアは、
「オギオのおじさん、わたし達は嬉しくてたまらないの、早く出してちょうだい」
と、未知の世界に飛び込むにはあまりにも無防備で、無邪気な声を上げた。
船は漕ぎ出した。
奄美の島に着く頃には太陽は真上に登っている事だろう。
最初のコメントを投稿しよう!