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やがて船は奄美の島に着いた。
二人は骨の軋むような痛みを体に覚え、これも穢れたという事の証かと、改めて自分達の体を確認するように腕を回してみたり伸びをしたりした。
「二人ともべっぴんさんだ」
オギオのその一言は少し不安になった二人を大いに励ました。二人はオギオから一枚の黒色のクレジットカードと銀行のキャッシュカードを受け取った。
「こっちを使えば買い物が出来るし、こっちのカードで現金が下ろせる。サーシャ様が用意して下さった。当面はこの島で普通の暮らしに慣れる事だ。都会に行くのはその後だ、分かったな。分からない事は島の人に何でも聞けばいい。ここの人はみんな親切な人ばかりだから、俺を代表になハハハ」
オギオは奄美の島の島民で、アブルの島に雇われて久しい。マリアとアリスの事も二人が生まれた時から知っている。オギオは五六時間の間にすっかり大人びた二人を見て複雑な思いになった。
「ありがとう、オギオのおじさん」
二人は相変わらずの無邪気さだ。
「しっかり頑張るんだぞ」
二人はオギオに促されて浅瀬で降りた。
二人は荷物をたすきにかけてワンピースの裾を濡らさないように捲り上げ、波に押されたり引かれたりしながら砂浜に上がって行った。赤い髪が風になびく。オギオは二人の後ろ姿をしばらく見送った後、またアブルの島に向かって船を漕ぎ出した。
これが十五年前の事である。
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