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風見は予約を入れているホテルへと急いだ。野村マリアとの約束の時間にはまだ時間があるが、気ばかりが急いてしまう。 彼は野村マリアのインタビューに一縷の望みをかけている。 いやそれはインタビューというよりも野村マリア本人にだ。
なぜ風見が野村マリアに一縷の望みをかけるかと言えば、彼女がアブル島出身という事に他ならない。マリアの出身地をなぜ風見が知ったか──それは彼女の独特の髪の色にある。赤紫色の髪はアブルの島民特有のもので、またどうして風見がそれを知り得たかと言うと、彼の母親も同じ髪の色をしていたからだ。
母親はある事情から風見が十歳になるかならない内に島に帰ってしまった。その事情を風見は随分と大人になって父親から聞かされる。
その話はにわかには信じがたいものだった。
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