契約と芽生えた愛情

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「なあ、香津美(かつみ)……もう一回言って欲しいって思うのは欲張りだと思うか?」  布団の上に重ねたままになっている私の両手に、聖壱(せいいち)さんは自分の手のひらを重ねてそんな事を強請(ねだ)ってくるの。  ……狡いんじゃないの、大人の男がそんな甘えたような言い方をするのは。ちょっとだけ可愛いなんて思ったじゃない。 「ば、馬鹿な事を……!私は普段誰かにあんな事言ったりしないんだから、一回だけで満足しなさいよ!」  何だか聖壱さんに弱みでも握られたような気がして、こんな恥ずかしい思いをするのならあんな事言うんじゃなかったわ。 「そんな高飛車な態度も、香津美の場合は照れ隠しだと分かるから可愛いとしか思えないんだけれどな。」  ニヤニヤと余裕の表情を浮かべて私を見ている聖壱さん、こんな意地悪な人……もう知らない! 「勝手に言ってなさいよ!私はお風呂に入らせてもらうわ!」  そう言って私は一人で浴室へ。今日起こったいろいろな出来事を、熱いお湯を浴びて全部洗い流したい気分だったの。シャワーを浴びて丁寧に髪や体を洗えば、身も心もすっきりしたような気がするわね。  しっかりと髪を乾かして、聖壱さんの所に戻ろうとすると何か話し声が聞こえたような気がして…… 「そうか、柚瑠木(ゆるぎ)。でも月菜(つきな)さんは……」  月菜さん?もしかして隣の部屋にいる月菜さんも目が覚めたのかしら?
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