契約と芽生えた愛情

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 真剣な表情でそんな質問をされて、私は凄く戸惑ったの。まさか聖壱(せいいち)さんの方からこの結婚を続けたいかどうかを聞かれるとは思っていなかったから。  狭山(さやま)常務の事が解決して、囮役だった私にはもう用はなくなったという事なの……? 「そうね、私はそのつもりだったけれど聖壱さんはそうでは無かったのね。それにしても、離婚の約束までの5年間も待てないなんて――――」  こんな性悪な私が彼に愛され大切に思われていると勝手に思い込んでいたなんて……なんだか可笑しくなってクスリと笑ってしまう。  こんな悲しい時にだって、素直に悲しい顔も出来ない女なのよね。  聖壱さんの契約結婚を受けた時から、その覚悟はしていたつもりだった。それでも少なくとも二人で決めた契約期間の間は聖壱さんの傍にいられるのだと思っていた。  私達の契約結婚を解消して、聖壱さんはこれからいったいどうしたいの? 「そうじゃない!俺が香津美(かつみ)に聞いているのは、そういう意味じゃないって分かるだろ?」  私の両肩に手を置いて、少し怒ったような顔を見せる聖壱さん。どうしてそんな顔をするのよ、今傷付いているのは私の方なのよ? 「そうじゃないのなら、一体何なのよ!聖壱さんの言っている事は訳が分かんないわ。」 「だから……俺が香津美に聞いているのは、このまま俺の契約妻のままでいいのかって事だ!香津美は俺と本当の意味での夫婦になりたくないのか?」
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