契約とプロポーズ

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契約とプロポーズ

 私にだって最初はもっとまじめで優しそうな人とのお話があったのよ?  未来の夫がどんな人か知りたくて、お見合い相手と同じ職場で働いている妹に彼の事を調べてもらったの。  素敵な人だったわ。「明るくて真面目で仕事も出来る人」って妹もべた褒めだった。  ……だけど、その人は妹を愛してしまった。妹も、その人の気持ちに応えたいと願うようになった。  邪魔してやったの、2人の関係をメチャクチャにしてやろうって。2人を騙して傷つけて……  それでも二人は諦めずに、お互いのために頑張るんだもの。いつまでも嫌がらせしているだけの私の方が馬鹿らしくなっちゃったのよね。  性格が悪い?知ってるわ。私も今までいろんなことを我慢させられ続けて、いつかおじ様たちの選んだ人と結婚するだけの人生だけなんだと思えば捻くれたくもなるでしょ?  お見合いが駄目になって、もしかしたら結婚相手は自分で選べるかもって思ったけれど、甘かったわ。おじさまからもっといい話が来ていたと、話を聞かされることになっただけ。  写真で見る限りは、とてもハンサムな男性。大企業の御曹司で、彼自身もひとつの会社を経営しているらしい。 「会ってみようと思うわ。」  こう言わなければきっとこの話はいつまでも終わらない。私は今日は疲れてるし、早くお風呂に入って休みたいの。 「そうか、そうか。彼はとても好青年だから、必ず気に入られるよう頑張りなさい。」  嬉しそうな岩崎の叔父様。好青年が良い夫とは限らないのに……私は諦めて溜息をついた。
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