契約とプロポーズ

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 お見合い相手と会う当日、私は一番お気に入りのワンピースを着て行った。髪だっていつもよりずっと念入りにセットしたの、叔父様や両親をがっかりさせられないから。  私と二人だけで話したいからと言われ、準備された個室で待っていた。  10分待っても20分待っても彼は来なくて、叔父様に電話で確認しようと思った時に扉が開いた。 「初めまして、私は江藤(えとう) 香津美(かつみ)です。」  精一杯の作り笑顔で挨拶するが、その男はそんな私を睨むだけで…… 「自己紹介はいらない、もう覚えてるから。俺の名前は狭山(さやま) 聖壱(せいいち)だ。どうせ数年の付き合いだ、よろしくしなくていい。」  ……はい?何なの、この男。話と全然違ってもの凄く感じが悪いんですけど?大体何のことよ、数年の付き合いって。 「あの、お話の意味がよく分からないのですが……?」  そう返すと、狭山さんは深いため息を吐いて、一枚の紙を取り出した。 「この手紙に契約の詳しい内容は書いてある。読んで納得できるようなら俺と結婚して欲しい。」  えっと、これってプロポーズ……な訳ないわよね?しかも契約って何?そんな話は私は岩崎の叔父様から聞いてないわよ?
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