契約と仕事の始まり

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 私の行動を注意する聖壱さんを見ていた刀山さんが、今度は私を見てニヤリと笑ったのよ。もしかしてこの人は…… 「そうなんです。聞いてください、社長!この人は私を見下して酷い事ばかり言ってきて……!」  自分が聖壱さんを叩いたことなどなかったようにして、どれだけ私が酷い女かを話して聞かせる刀山さん。  よく言うわよ、私の言葉に貴女も十分言い返していたくせに……  聖壱さんにあること無い事ペラペラと喋る彼女を見ていたら、なんだか何もかも面倒になって来た。 「刀山さん、それで満足なら好きなだけ私の悪口でも言ってて頂戴。悪いけれど私はこれで失礼するわ。」  さっさと帰ろうとすると、聖壱さんから手首を掴まれる。なによ、私みたいな妻は嫌なんでしょう? 「香津美、俺の話は終わってないぞ?」 「刀山さんは聖壱さんと話したいそうですよ?私ではなく彼女の相手をしてあげたらどうですか?」  ちょっとだけ、彼の言葉に腹が立ったのは事実。私を愛してるなんて言ってたくせに簡単に私の事を…… 「大事な妻に暴力を振るような女と何を話すんだ?刀山の処分は部下にやらせるから問題ない。」 「社長、そんな……っ!」  泣き崩れる刀山さんをその場に置いて、聖壱さんは私の手首を掴んだまま社長室へと連れていく。
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