契約と新妻の自覚

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契約と新妻の自覚

 社長室の入り口に立っていたのはもの凄く顔の綺麗な男性。身長は聖壱さんと同じくらい高いけれど、男らしい彼よりも少し線が細くまるで物語に出てくる王子様の様だわ。 「久しぶりだな、柚瑠木(ゆるぎ)。お前の記憶は間違ってないぞ、ここは社長室だ。」  聖壱さんは私の上からゆっくりと体を起こして、入り口の男性に向かって手を上げる。のんびり挨拶してないで私の上からどいて頂戴よ! 「そうですか。聖壱が堂々と女性と乳繰り合っていたので、僕は来る場所を間違えたのかと思いましたよ。」  ち、乳繰り合ってですって?こんな綺麗な顔でそんな事を言われると、恥ずかしくて堪らない。さっきの私たちの姿だけを見れば、そう思うのも仕方ないのかもしれないけど。 「そうか、悪かったな。あまりに香津美が可愛くて、柚瑠木が来るのを忘れてたんだ。」  私が可愛くてって……もしかして私は聖壱さんに揶揄われていたの?聖壱さんは私が慌てているのを見て楽しんでいたんだわ! 「ああ、この人が聖壱の契約婚の相手ですか。とても華やかな美人で良かったですね。」  感情のこもらない声でそう言うと、彼はまだ立ち上がれないでいる私の傍へと歩いて来る。男性とは思えないほど綺麗な肌に氷のように冷たい瞳…… 「初めまして、僕の名前は二階堂(にかいどう) 柚瑠木(ゆるぎ)。聖壱の幼馴染で今は仕事仲間です。」
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