契約と新妻の自覚

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 部屋に帰って着替えてから、晩御飯の準備をする。相変わらず難しい料理は出来ないけれど、簡単のものをいくつか作って並べて置く。  こんな私の料理でも聖壱さんは喜んでくれたから。  だけど料理が終わり、お風呂の準備が終わっても聖壱さんは返ってこない。 「遅いし……」  ソファーで丸まって、彼を待っている時間……ずっと私たちの間に交わされた契約について考えていた。  聖壱さんが私の事を「好きだ、愛しい」と何度も繰り返すからきちんと考えていなかったけれど、私達の結婚は聖壱さんにとって都合のいい契約婚に過ぎないのだ。 「何でことかしら、適当な言葉でのせられてその気になって……私、馬鹿みたいじゃないの。」  世間知らずのお嬢様の私なんて、あの人からすればその気にさせるのは簡単よね。その方が楽に都合よく使えるし……何とも言えない感情で涙が溢れそうになった、その時。 【カチャリ……】  玄関の扉の開く音がした。だけど私はソファーで丸まったまま、そこから動こうとはしなかったの。彼の足音がだんだんと近づき、リビングの扉が開く。 「やっぱり拗ねているのか、香津美。」  そう言って私の髪に触れる聖壱さん。だけど私はそんな彼の言葉に腹が立ってしまって…… 「拗ねてなんていないわ。どうせ私は聖壱さんと契約婚しただけのお飾り妻だって分かってますから。」
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